予定では、午前2時に親父を迎えに行き、朝マヅメの海に立っているはずだった。しかし、呼び鈴を鳴らしても、電話をかけても、暗闇に沈んだ親父の家から返事はない。
釣りに関しては一度も遅刻をしたことがなかった親父が、まさかの「日にち間違い」。老いゆく父の姿を突きつけられたような、少しの寂しさを抱えて始まった7時間遅れの釣行だったが、海は私たちを見捨ててはいなかった。
餌取りの猛攻、底をつく仕掛け。そんな絶体絶命のピンチを救ったのは、100円ショップの釣り具が引き起こした「奇跡」だった。絶望の夜明けから一転、40cmの黒鯛を手にするまでの、波乱に満ちた房総釣行記をお届けします。

この記事はこんな人におすすめ!
- 釣りの日に遅刻して残念な思いをしたことがある人
- エサ取り(フグ)の猛攻に心を折られかけている人
- 「ダイソーの釣り具って本当に大物が釣れるの?」と半信半疑な人
- 親子や家族で釣行する、温かくも騒がしい時間が好きな人
- 「だから釣りって面白い!」という経験をしたことがある人
- 房総半島の釣り場や釣果に興味がある人
今回の釣行記以外にも、現場の生きた情報がわかる釣り場ガイドや、コスパ最強アイテムなどのタックルレビューなど、多角的な視点で釣りの魅力を紹介しています。
これから釣りに挑戦したい未経験者の方から、さらなる釣果を目指す初心者の方まで、役立つ記事を幅広く揃えています。ぜひ、お好みのカテゴリーから他の記事ものぞいてみてください。
第1章:悪夢の幕開け――静寂の午前2時と、空白の7時間

鳴り響く呼び鈴、返らない着信。釣り人生初の「大遅刻」
待ちに待った南房総への釣行当日。予定では午前2時に親父を迎えに行き、夜明け前には磯に立っているはずでした。しかし、親父の家の前に到着しても、辺りは静まり返ったまま。
呼び鈴を鳴らしても、何度も携帯に電話をかけても、暗い家の中から反応はありません。「釣りに関しては、誰よりも早く準備して待っている」のがこれまでの親父でした。
そんな親父が電話にも出ないという異常事態に、不安が頭をよぎります。「まさか中で倒れているのでは?」という最悪の想像さえ浮かびましたが、結局その時は一度自宅へ引き返すことにしました。
「いつもの親父」ではない違和感と、7時間の葛藤
数時間後、ようやく連絡が取れた親父の口から出たのは「……今日だったか?」という言葉。単なる「日にちの勘違い」でした。
正直に言えば、これまでは集合時間の30分前には外で待っているような人だっただけに、ショックがなかったわけではありません。
「日にちを間違えるなんて、親父も年をとったのかな……」という、老いに対する寂しさのような感情が胸をかすめました。
しかし、ここで怒っても時間は戻りません。気を取り直し、予定から7時間遅れた午前10時、私たちはようやく房総へと車を走らせたのです。
到着は午後1時。焦る心に効いた「妻のサプライズ」

結局、房総の釣り場に到着したのは午後1時を過ぎていました。朝マヅメどころか、午前中のゴールデンタイムもすべて終わってしまった時間です。
しかし、ここまで遅れてしまったら、もう焦っても仕方がありません。潮風に吹かれながら、「まずは腹ごしらえをしよう」と親父と二人、腰を下ろしました。そこで取り出したのは、妻が持たせてくれた手作りのおにぎりです。
一口頬張ると、中から現れたのはまさかの肉団子! その思わず吹き出してしまうような「おにぎりの隠し玉」に、気分が一変しました。時間が大幅に削られたショックも、先を急ぐ焦燥感も、どこかへ消えていく。そんな妻の茶目っ気たっぷりな優しさに心もお腹も満たされ、前向きな気持ちで実釣の準備に取り掛かりました。
第2章:悪夢は続く!?フグ地獄から夕まずめに起きた奇跡!

餌取りレベルじゃない!無限フグ地獄
釣り座を確保して、第一投を投じたのは午後2時を迎える頃。しかし、そこで待っていたのは、さらなる「悪夢」の続きでした。コマセを撒いた瞬間に海面を真っ黒に染めたのは、尋常ではない数のフグの群れ。もはや「餌取り」なんて生易しい言葉では片付けられない、まさに逃げ場のない無限地獄でした。
本命のタナに届くどころか、エサが着水した瞬間に奪い去られる「秒殺」の嵐。7時間の大遅刻という絶望を乗り越えてようやく辿り着いたというのに、今度は海までもが私たちを拒絶しているかのようでした。房総の海は、想像を絶する冷徹さで私たちを迎え入れたのです。
だから釣りはやめられない!夕マズメに起きた奇跡!

数時間にわたり、ただひたすらにフグと向き合い、エサを付け替え続ける不毛な時間が過ぎていきました。時刻は午後4時。辺りが夕闇に包まれ始めた「夕マズメ」のゴールデンタイムですが、海の中は相変わらずフグの気配で満ちています。ただ、釣れるフグのサイズは徐々にアップしているのが唯一の希望でした。
「あと10分。これで終わりにしよう」
親父とそう言葉を交わし、半ば諦めムードで放った一投でした。海面を埋め尽くしていたフグの影が一瞬で消え、不気味なほどの静寂が訪れたその時。
ウキが、まるで見えない力に吸い込まれるように、静かに、ゆっくりと、それでいて抗えない力強さで「すーっ」と深く沈んでいきました。タイミング良く合わせを決めると、竿が綺麗な弧を描き、ズシリと重い衝撃が腕を襲います。この重み、この抵抗。間違いなく「あいつ」だ。
慎重なやり取りの末、水面に姿を現したのは銀色に輝く美しいチヌ(黒鯛)。あれほど海を支配していたフグの猛攻が嘘のように、最後の最後で本命が微笑んでくれました。
7時間の大遅刻、そして逃げ場のないフグ地獄。どんなに絶望的な状況でも、糸を垂らしていれば最後の1秒まで何が起こるか分からない。これこそが「だから釣りはやめられない」と思わせてくれる、釣りの真髄であり最大の魅力なのだと、震える手で黒鯛を掴みながら改めて実感しました。
ホテルまで車で1分!温泉と海鮮バイキングで最高の夜

釣果の興奮冷めやらぬまま、今日のお宿へ。今回宿泊したホテルは、なんと釣り場から車でたったの1分という最高の立地。冷えた体を温泉で芯から温め、夜は豪華なバイキングを堪能しました。
「あの遅刻がなければ、この夕マズメの1匹には出会えなかったかもしれないな」 そんな風にハプニングさえも前向きに笑い飛ばせる、最高の夜となりました。明日への期待を胸に、1日目は更けていきました。
第3章:ダイソー仕掛けで40cm!絶体絶命からの大逆転

釣り針が全滅!二日目に訪れた最大のピンチ
ぐっすり眠って迎えた二日目。朝食バイキングを済ませ、早々に昨日と同じ釣り場に向かいました。しかし、私たちを待っていたのは、前日以上の過酷な状況でした。吹きつける強風、急激に下がった水温。そして海の中には、昨日以上にやる気満々の「フグ軍団」が手ぐすね引いて待っていました。
投げても投げても、活性の高すぎるフグに針を切られる最悪の展開。そしてついに、恐れていた瞬間が訪れました。ストックしていたすべてのチヌ針が底をついてしまったのです。
釣り人にとって、針がなくなることは「強制終了」を意味します。7時間の大遅刻を乗り越えてようやく迎えた二日目だというのに、「まさか、針がないためにここで終わりなのか……」。
救世主!?ダイソーの「胴突き仕掛け」にすべてを託す
万事休す。しかし、タックルボックスの隅にサビキに紛れて残っていた「ダイソーの胴突き仕掛け」が、最後の希望を繋いでくれました。
勿体なさはありましたが、背に腹は代えられません。2本の針を活かすように余分なラインをカットし、なんとか戦える形に急いで整形。「これでダメなら今日はもう終わり」と自分に言い聞かせて仕掛けをセットしました。
そのわずか数投後、静寂を破る衝撃が走ったのです。
それまでのフグとは明らかに違う、ガツン!という手応えとともに、竿先が強烈に引き込まれました。ジリジリと鳴り響くドラグ音。大物を確信した瞬間、頭をよぎったのは「これは胴突き仕掛けだ」という不安でした。
細いハリス、小さな針。長期戦になれば切られる。慎重かつ、しかし強気なスピード感が必要とされる、薄氷を踏むようなファイトが始まりました。
銀影、浮上!今年一番の大物との激闘

「……デカい、クロダイだ!」
海面に姿を現したのは、鈍い光を放ちながら銀色に輝く立派な魚体。親父がタモを手に、必死に身を乗り出します。しかし、タモ入れ直前のあと数センチというところで、クロダイが最後の猛抵抗を見せました。
ダイソーの細いハリスが悲鳴を上げ、竿が極限までしなる。激しく暴れ狂う銀色の影に肝を冷やしましたが、ここで勝負あり!
無事にタモに収まったのは、昨日とは比べ物にならない40cm近い大物。 「ダイソーの仕掛けで、まさかこんな大物が……」 ずっしりと重いその魚体を掲げたとき、今年一番の興奮が込み上げました。わずか100円の仕掛けが、底をついた絶望を最高の歓喜へと塗り替えてくれたのです。
ドラマは続く!?迎えた対照的なフィナーレ
ドラマはまだ終わりませんでした。40cmの興奮が冷めやらぬ中、再び大きなアタリが私を襲います。一瞬見えたのは赤っぽい魚体。しかし、激闘でダメージを受けていたダイソーハリスがここで限界を迎え、痛恨のラインブレイク……。一方の親父も、ついに訪れたこの日一番の大物のアタリを、惜しくもバラしてしまいました。
結局、そこでエサも尽き、親父は本命ボウズで納竿することに。 「あぁ、今のデカかったなぁ!次は絶対に釣ってやるぞ」 そう言って本気で悔しがる親父の姿を見て、私はどこかホッとしている自分に気づきました。
昔に比べて体が少し不自由になり、海へ来る機会もめっきり減ってしまった親父。でも、黒鯛を追いかける情熱だけは、あの頃のまま何も変わっていなかった。そんな力強い姿を隣で見られたことが、何より嬉しかったのです。
「釣れなかったけど、こうして大好きな海の景色を見られただけで満足だよ」
帰り際、海を見つめてそう呟いた親父。40cmの余韻に浸る私と、悔しさを滲ませつつも穏やかな表情の親父。対照的な二人を乗せた車は、夕暮れの南房総を後にしました。ハプニングだらけだったけれど、終わってみれば思い出に残る最高の釣行となりました。
第4章:今回の奇跡を呼んだタックル&エサ

今回の釣行で、絶望的な状況を救ってくれた「本気で頼れる」アイテムたちをご紹介します。これらがなければ、あの40cm近い黒鯛に出会うことは到底できませんでした。 いずれも私が長年愛用し、何度も窮地を救われてきた実績十分の道具ばかりです。黒鯛釣りに興味のある方は、ぜひ参考にして下さい!
10年来の相棒!数多の黒鯛を仕留めてきた「信頼のロッド」
10年以上、私の釣行を支え続けてくれているまさに「右腕」とも呼べる相棒です。これまでこの竿で何匹もの黒鯛を釣り上げてきましたが、その確かな実績は今回の40cmという結果でも改めて証明されました。
大物の強烈な突っ込みを難なく受け止める唯一無二の粘り強さがありながら、非常に扱いやすく、実はフカセ釣り初心者の方にこそ自信を持っておすすめしたい一本でもあります。長年使い込んでいるからこそ断言できますが、基本性能が極めて高く、最初の一歩からベテランになるまで長く付き合っていける最高の一竿です。
今回、大物とのやり取りを支えてくれたのは、なんとダイソーで500円(税抜)で販売されているスピニングリールでした。これにナイロン2号を巻いた、いたってシンプルなセッティングです。 「500円のリールで本当に大丈夫か?」と思う方、安心して下さい!
圧倒的な感度と視認性!長年信頼を置く「遠矢ウキ」
私が10年以上、他の追随を許さず愛用し続けているのが、この「遠矢ウキ」です。個人的には、海面にスッと立ち、わずかな変化も逃さないタチウキ(棒ウキ)スタイルが最も信頼できると考えています。
このウキの最大の魅力は、何といってもその圧倒的な視認性です。遠くのポイントでも、逆光の中でも、黒鯛がエサに触れた瞬間の小さなシグナルを鮮明に伝えてくれます。
「ウキのアタリを取るのが苦手」という初心者の方にこそ、ぜひ一度手に取っていただきたいアイテムです。長年使い続けているからこそ自信を持って言えますが、このウキが見せる美しい「アタリ」の出方を知ってしまうと、もう他のウキには戻れません。
私の黒鯛釣りに欠かせない「鉄板のエサセット」
黒鯛釣りにおいて、エサの選択は勝敗を分ける最大の鍵です。私が絶大な信頼を置き、長年使い続けている「付け餌」と「コマセ」の組み合わせをご紹介します。
【付け餌】フグ地獄を突破した「救世主の練りエサ」
海面を覆い尽くすフグの猛攻。オキアミでは秒殺される場面で、唯一本命のタナまでエサを届けてくれたのがこの練りエサでした。この粘りと色がなければ、夕マズメの奇跡は起きなかったはずです。
【コマセ】これ一つで完成!「必勝配合エサ」
私のコマセ作りは非常にシンプルです。この配合エサに冷凍オキアミを混ぜるだけでOK。遠投性、集魚力、そして濁り。黒鯛を寄せるために必要な要素がすべて凝縮されています。あれこれ悩む必要がなく、これさえあれば自信を持って竿を振ることができます。
予備の備えは必須「チヌ針・仕掛けセット」
今回は、フグの猛攻により全て使い切ってしまいましたが、普段使っているのがこちらのアイテムです。
今回、実際に40cm近い黒鯛を釣り上げ、絶望の淵から救ってくれたのがこちらの仕掛けです。本来のターゲットとは違いましたが、あの強烈な突っ込みに耐え抜いた実績は、私自身が身をもって証明しました。

「まさか100均の仕掛けで……」と思うかもしれませんが、釣り場では何が起きるか分かりません。今回のような「針が尽きた!」という極限状態に備えて、タックルボックスの隅に一つ常備しておくと、いつかあなたを救う「奇跡の針」になるかもしれません(笑)。
ダイソーの商品はネットでも買えますが、店頭で見かけたら迷わず予備として確保しておくことを強くおすすめします!
最終章:ハプニングさえも、最高の思い出に

7時間という大幅な寝坊から始まった今回の釣行。一時はエサ取りの猛攻に絶望し、針さえも使い果たすという最悪の展開でしたが、蓋を開けてみれば40cm近い黒鯛という最高の釣果に出会うことができました。
計算通りにはいかないけれど、予期せぬ奇跡が起きる。これだから、釣りはやめられません。また、今回の激闘を通じて道具のありがたさを改めて実感しました。決して「高価なものこそがベスト」ではないということ。使い込んだ相棒や、ピンチを救ってくれた意外な仕掛け……。釣り好きの皆さんにも、そんな「自分だけのお気に入り」がきっとありますよね。
そして何より、体が少し不自由になってもなお、本命を逃して本気で悔しがる親父の姿を隣で見られたこと。その情熱が、40cmの黒鯛に勝るとも劣らない今回の大きな「釣果」だったと感じています。
最後になりますが、波瀾万丈な親子釣行記を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。皆さんの次なる釣行が、最高の歓喜に包まれることを心より願っています。

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